中学受験算数で学ぶ特殊算について
現在通ってくれている小学校3年生の生徒さんは新しい内容にチャレンジすることが好きなようで、先取りで4年生の内容を学習しています。
4年生の1学期分くらいは終わっており、3年生の終わりまでに4年生の内容を理解することを目標に頑張ってくれています。
その生徒さんが使っているテキストは教科書レベルの内容を、自学で進めやすいように工夫して作ってあるテキストです。
教室には中学受験用のテキストもおいてあるのですが、そのテキストの表紙にくじらの絵がかかれているのを見て、「5年生のテキストはこっちにしたい」とのこと。
中学受験用のテキストなので学校の教科書では学習しない内容も含まれています。
学校の教科書には載っていない内容の代表例が特殊算といわれるもので、中学受験で出題される場合があります。
他にも図形に関する問題、規則性について考える問題、割合や比の応用問題などがあり、中学受験をしない子にとっては触れる機会がないままになる内容がたくさんあります。
前述の生徒さんはせっかく先取り学習で進めているわけですから、できた時間の余裕にこうした問題に触れて欲しいという気持ちがありましたので、僕としてはとても嬉しい申し出です。
その生徒さんが中学受験をするのかどうかはわかりませんが、しない場合であっても、中学・高校での数学の理解を大いに助けることになるのは間違いないと確信しています。(それについては次回以降書かせていただきます。)
さてここで、特殊算とはどんなものなのか、ご存知ない方もいらっしゃると思いますので紹介させていただきます。
有名なものには「つるかめ算」というものがあります。
【問題】つるとかめ、あわせて頭が10で、足の数はあわせると28本です。つるとかめはそれぞれどれだけいますか?
この問題は中学校で学習する連立方程式を利用して解くことができます。
つるの数を \( x \)、かめの数を \(y\) とします。
頭の数はあわせて10なので $$ x+y=10. $$
足の数はあわせて28本なので $$ 2x+4y=28. $$
この連立方程式を解くと \(x=6 , y=4 \) であるから、つるは6羽、かめは4匹とわかります。
次に、連立方程式を知らない小学生はどのように考えるのかをご説明します。
仮に10匹すべてかめだとすると足の数は \(4 \times 10=40\) 本となります。
しかし実際の足の数は28本なので \(40-28=12\) から12本多いことになります。
ここで、かめ1匹とつる1羽を入れ替えることを考えると、それぞれの足の数の違いから2本減ることになります。
(つまり、かめを9匹、つるを1羽にすると足の数が2本減って \(40-2=38 \) より38本となります。)
ではかめ1匹とつる1羽を入れ替えることを何回繰り返せば足の数を12本減らすことができるでしょうか。
1回の入れ替えで2本減るわけですから、 \(12 \div 2=6 \) で6回入れ替えればよいとわかります。
入れ替えた回数だけつるの数が増えますからつるは6羽となり、このことからかめは4匹とわかります。
僕がこの問題で好きな点は「仮に」という考え方から始まる点です。
仮説を立ててそこから考えるということは普通の算数の中ではあまりしないですよね。
また、つるとかめを入れ替えるという操作をイメージして、割り算の「いくつとれるか」という視点で考える点も好きです。
(割り算には大きく2つの理解があります。「分けたときに1つ当たりいくつになるか」と「その中からいくつとれるか」です。)
そして、1つの式で答えが出るわけではなく、操作を順番に式にして考えるという点も好きです。
このように、1つの問題の中でいろいろなことを考えていくことになります。
きちんと理解できて解けるようになったときに得る達成感はかなりのものがあり、実際に僕も中学受験の勉強では算数ばかりしていた記憶があります。
早い時期にこうした多角的な視点を得られることは後の大きな財産になると考えています。
長くなったので次回に続きます。